ETERNAL WISH




『あらあら・・岬さんちの・・・』

学校の帰り道、近所のおばさんに会った。
僕の家が父子家庭なのを知っていて
何かと世話を焼いてくれる。

『こんにちは』

僕が頭を下げて通り過ぎようとするのを
おばさんは大袈裟な身振りで堰き止めて
『ちょっと待ってて、いいものあるのよ』

そう言って家の中に消えていく。
僕は寒空の下でポツンと待った。

『親戚が送ってくれたのよ、皮付きだけど』
そう言ってビニールに入った栗をくれた。

『わあ!ありがとうございます』







秋は美味しいものが沢山出回って
僕の食材探しも楽しくてワクワクする。

『(栗ご飯にしたら父さん喜ぶかな?)』


僕の頭にフとよぎる。





『(若林君だったら大喜びするかも・・・)』










11月はちょっと嫌い。
だって楽しい夏も終わってしまって
冬の訪れを告げる寂しい季節になるから。

朝起きてその寒さに身を震わせて
今まで平気だった水が急に冷たく感じたり
半そでから上着、コートの準備をして
洗濯物を干す手も冷たくなるし
夏の面影を引きずりつつ
練習の時も上着を脱ぐのを躊躇ったり。







違うよ。

ホントは11月が中途半端だから。。。

冬休みに若林君と会って
春休みに僕が会いに行って
夏休みに若林君と遊びに行って・・・


でも秋には会えないんだもん。















自分の家のカギを開けて
殆ど家具も無い、殺風景な部屋に戻る。

『(栗、お湯につけよう)』


カバンを置いたそのままで、
僕は湯を沸かし始めて
朝、父さんが散らかしたままの部屋を
片付ける為に窓を開けた。


『あ・・・』



アパートの前の木に、
一羽のヒヨドリ。


『こんにちは』





僕の呟きが聞こえたかの様に
ヒヨドリがカクと首を回す。







もし僕に羽根があったら
若林君の所に飛んで行けるかな?



ホントは今スグにでも
会いたいよ・・・












秋は嫌い。
だって若林君に会えない季節だから。













ヒヨドリが小さく鳴いた。



『ねえ、君は何所まで飛んでいくの?』

ヒヨドリがちょん ちょんと位置を変える。








『もし、若林君に会ったら伝えて』










僕自身が飛んで行けなくても
僕の気持ちが飛んでいければいいのに・・・
















『会いたいよ、って伝えて』















ヒヨドリが2,3度首を傾げてから
大きく羽ばたいてオレンジ色の空に溶け込んだ。




ちょっと冷たい風が
僕の頬を優しく撫でる。



僕の想い、若林君に届くといいね。














ジャーのスイッチを入れて
ちょっと一息ついた。




『(栗ご飯、今度若林君にも作ってあげよう)』













目を閉じた僕の前で
若林君が美味しそうに

栗ご飯食べてくれてる。













『会いたいな』










秋はちょっと寂しい。



若林君の事を考える時間が長くなるから。





あのヒヨドリ


僕の気持ちを伝えてくれたら いいね。


























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