■ GENMISAKI JUNEBRIDE ■





『6月ってまだちょっと寒いね』

まだ朝が早いから???
シャツの上に軽い上着を羽織る。

僕は6月の第4週、キリスト昇天祭を利用して
ドイツ若林君の所に遊びに来た。
2人でちょっと田舎の方に旅に出る。

時差のせいもあるのかな?
なんだか朝、早く目が覚めちゃって
柔らかな陽光の下に散歩に出た。


『5月だったらアスパラガス食べたかった』
朝に立った小さな市場に踏み入れて
緑茂る野菜の山を縫って歩く。

そう。
5月の白アスパラガスは絶品なんだ。
若林君は知ってるかな?

食べさせてあげたいな・・・

『アスパラガス?』
若林君が野菜の山に目をやって笑う。
『ドイツに来たらチキンだろ?』

『チキン?』

『そ!ドイツではブロイラー禁止なんだ』


やっぱり若林君は野菜より肉・・・だよね。。。






朝食の後、近くにあるお城見学に出かけてみた。

『今から行く城は1061年に建てられたんだってサ』

若林君が宿から貰ってきたガイドブックを声に出して読む。

『麓から350m・・・岬、シャトルバス乗ろう』

僕達は駅からお城に向かってバスに乗り込む。



あんまり知られてない場所だから?
お城に向かうバスの中に、人はまばらだった。

緑の濃い丘をバスは息を吐き吐き登って、
頂上に聳え立つ、厳格ながらも華奢な塔の数々に
息を呑むほど圧倒されて行く。

『すごいね・・・』

窓から顔を出して覗き込む。
ドイツの春の風が 僕の顔を撫でた。





着いた時、何故かお城の中の見学は無理と言われて
僕達は城内の庭を歩いて行く。

『なんだよな〜 折角来たのにさ!』
若林君は不服そう。
庭園の緑に囲まれて山道を登って居た時、
お城の城門に目が止まった。

『見て…』


城門の前にこじんまりした人だかり。

『結婚式だ・・・』


新婦さんの真っ白なドレスが緩やかに翻る。
幸せそうに微笑む2人を、
みんながカメラに収めていく。

『結婚式だったから入れなかったんだよ』


僕らもみんなに近づいて城門をくぐる。

『日本ならジューンブライド?
 そんな言葉、ドイツにもあるのかな???』


花嫁さんの側を通る時、息を呑んだ。


(こんなに幸せそうな顔)

僕の心にも笑顔が浮かぶ。


(もし、僕が若林くんと・・・)
(そうしたらこんな笑顔が浮かぶのかな?)


自分の想像が可笑しくなって若林君の顔を盗み見る。


(アレ?)


若林君の表情はあんまり笑ってないや・・・






結婚式の一団の前に黒塗りのリムジンが着いて、
彼らをどこかに運んで行き、僕等の周りには
しっとりとした静寂が訪れた。
青々しい緑の風。
城から漂う、厳格な香り。

若林君の、神妙な空気。






宝物室を出て、殆ど人気の無い、
チャペルに向かって歩き出した。
そのドアも今は閉まっていて、
入って良いのかも解らない・・・



『この奥がチャペルだってさ』

若林君が簡単にノブにその手をかける。

『入っていいのかな?』
『カギが開いてたら御邪魔しようぜ!』


ギ ギィ〜 と古めかしい音がして
明かりが緩やかに漏れ出した。

一面を包む 蒼い、その匂い。
さっき吹き消された蝋燭の様な、
時間の経った馴染みの風が吹く。


そう。


天上から、その側面から・・・
全てステンドグラスに覆われていて
僕らに優しい影を落とす。
ターコイズ色の天上。
周りに並べられた蒼い旗の数々。







そのあまりの綺麗さに
僕の足はすくんでしまった。







『konnen wir hereinkommen?』

若林君が床を掃く老人に声をかける。

『kurze Zeit』


いたずらっ子みたいな笑顔で
若林君が僕の手を引いて中に引き入れる。


『ちょっとなら見ていいってさ』






赤い絨毯の、短いヴァージンロード。
僕等の後ろでドアがガタンと閉まる。

この、
天上から降り注ぐ  蒼い

蒼い ステンドグラスの光が
僕らを優しく包んで光る。


隣の若林くんもが、キラキラ光る。
一緒に並んで大きな十字架の前に立った。


『なんか神妙な気分だよな』

繋いだ手を若林君が優しく揺する。

『うん』


見上げたその笑顔が眩しくて
僕は思わず目を細めた。







僕の手を急にギュッと握る。


『汝 健やかなる時も 病める時も 
 この者を愛する事を誓いますか?』




『え?』



見上げた僕に照れ臭そうな顔。


『岬は・・・  誓う?』




胸がドキドキした。
思わず顔を伏せる。




『ちか・・・誓います』




ゴホン・・・
わざとらしい咳払いの後に若林君の声が続く。



『オレも・・ 誓います』





僕も若林君の手をギュッと握る。





『じゃあ新郎は新婦に誓いのキスを・・・』












僕等の周りがターコイズ色の海に包まれる。
























『今のご時世、男同士でも結婚できるんだぜ』

帰りのバスの中で若林君が呟いた。

『日本じゃあ無理だけどサ』




さっきの光景が目に浮かんで
ちょっと頬が熱くなる。


『さっきのは予行練習?』



そのまま


若林君はずっと黙ってた。







バスの降り際。

急に振り返って笑顔で言う。



『いつか本物してやるから… 待ってろよ』








僕等の周りに
蒼い風が吹く。


きっとそれは優しくて
僕等の未来を ・・・



ターコイズ色のステンドグラスが
優しく未来を照らし出す瞬間。












僕等の未来が


蒼く染まる。








■ 言い訳 ■

6月に紫陽花の話を書こうと思って
取っていた壁紙・・・
ステンドグラスの話なのに(>_<)
アンバランスでごめんなさい〜!!!


ジューンブライド♪♪♪

いつかそんな2人を見たい〜ヾ(≧▽≦)ノ

なんて♪♪♪




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