エレベーターに乗ったと思ったら、
すぐ下の階で止まる。

『???』
『俺、今日ココで寝るから、来い』

え?
ええええええええええええええええ〜ッ!!!
も…もしや ソレって???

『ばか、何もしねえからちょっと付き合え』

また、緊張して来た。。。

若林さんが財布からカードを取り出して
ドアの横のボックスにスライドさせる。

もう、大丈夫。
驚かない。
きっとこの部屋も
若林さん専用なんだ・・・


落ち着いた雰囲気の部屋。
だけど暖房もまだ効いて無くて
部屋に入って身震いする。
幾つかのテーブルランプが、
優しい光を部屋の中に投げかける。

若林さんが部屋の奥に進んで、
淡い色の、重厚なカーテンを引き開けた。

壁から天井まで続く大きな窓。

『岬、こっち来てみ?』

眼下のキラキラしたネオン。

『俺、ココからの景色気に入ってるんだ』

若林さんの隣に立つ。
普段の僕なら見上げる事は出来ても、
殆ど見下ろす事のない景色。
ほんの暫く、行過ぎる車を眺めた。
オレンジのテールランプが僕等の間に時を刻む。

『岬』

呼びかけられて顔をあげると
あれ?いつに無く、真剣な顔。

『ま…前にその…俺達、じ…事故に遭っただろ?』

え?事故?
何の事だろう…

キョトンとする僕に若林さんが詰め寄る。

『てめぇ、忘れたのかよ!自分で言ったんだぜ、
 アレは…事故なんだって…』

アレ?もしかして…
もしかして     あの事?
さっきまでの優しい時間が一気に冷めた。
その代わり、顔がどんどん熱くなる。

『じ…事故って…あの…』
『忘れてるなら、もういい』
『(僕のファーストキス)忘れられる訳…無いです』
『俺だって・・・』
『そ…それがどうかしたんですか』

心臓がバクバクいってる。
なんで?なんで急にこんな話に???
若林さんがゆっくり僕に近寄って来る。


どうしよう。。。
そんなに見つめられたら
僕、動けないよ…


『ちゃんとしたのをしよう』
『え?』

『俺、岬がスゲエ好き』


重なった唇から吐息が漏れた。
普段は乱暴な若林さんが
優しく、優しく僕を包む。

なんか
体の力が全部抜けて
僕の周りは
若林さんでいっぱいだった。

ヘリの騒音も、
美味しいご飯も
ネオンの明かりも
全部、溶けて行く・・・

そっと唇が離れて、若林さんが呟いた。

『俺と付き合おうぜ』

そのまま、僕の肩に顔を埋める。

『岬が好きだ』

僕を抱く腕に力がこもる…

暖かい。。。
僕の心に一番最初に浮かんだ言葉。
いつもクールな若林さんから
つい…漏れてしまった心の言葉。

その純粋さが凄く心に伝わって来る。


心臓が飛び出しそうな位高鳴って、
僕も思わずそっと若林さんに手を回した。

僕も…若林さんが好きなのかな。。。

凄く、気になる存在だけど
一緒に居るとドキドキして
色んな意味で緊張して…
でも、いつも心のどこかに引っかかって
出会った時から僕の心を占めちゃった人…

事故じゃない
ちゃんとしたキスもドキドキした。
ちっとも嫌じゃなかった。

今、僕を抱いている力強い腕に凄く安心する。。。


もしかして。
僕も?

僕も ?????


その時。


ガク・・・と若林さんが僕に体重を預ける。

『ちょ…待って!!!』


まだ 心の準備がッ。。。

2人で絨毯の上に倒れこんだ。
『わ…若林さん…僕…その…』

パニック状態の僕に、
更に若林さんが重くのしかかる。

『待って…』

しばらく、何も起きなかった。

『?』

僕の上に倒れこんだまま、
若林さんがピクとも動かない。

『わか  ばやし さん?』

なんとか上半身を起こして、
目を閉じたままの若林さんを覗き込む。

『熱っ…』

若林さんのオデコに触れた手が
すっごく熱い。

手を肩に差し込んで上を向かせた。
絶対、凄い熱あるよ〜!
どうしよう・・・
グラグラと若林さんの身体を揺する。

『若林さん…少しだけ歩けますか?』
『ああ…』

なんとか若林さんを抱え起こす。

『大丈夫だよ、何ともねえ』

あ〜モウッ!!!
何とも無いワケが無い!

『寝室、ドコですか?』
『え…???』
『し ん し つ』
『あ…アッチ…』

若林さんが指差したドアに入り込む。
明かりをつけてベットカバーを捲る。
枕を膨らまして暖房を強くした。

『若林さん…ホラ』
『な…ちょっと岬…お前…大胆…』
『っち…違いますよ』

大きな身体を引っ張って寝室に連れて行く。

『ベットに横になって下さい』

若林さんをベットに放り込んで、
続いてるバスルームに入って行く。
猫足のついたバスタブが目に入った。

ちょっと寝室から遠いけど、無いよりマシだよね?
金色のノブを捻って、熱いお湯をいっぱいに出す。

『何してんだ?』

ベットの傍に戻った僕に、
若林さんが問いかける。

『暖房入れてるし、乾燥しないようにしてるんです。
 僕、薬もらって来ますから、寝てて下さいね』
『フロントに電話すリャあ持って来てくれるよ』

あ…そか。
うううううう〜ッ
やっぱり僕ってこう言うの、
慣れてない。。。

若林さんが電話してる間に、
洗面所に行ってタオルを濡らした。

『すぐ来るから、悪いけど出てな』
『いいから、寝てて下さい』

ぎゅう、と寝かしつけて
絞ったタオルを額に乗せる。

『スゲエ…気持ちいい』

しばらく、静かな時間が続く。
なんか、さっきより具合悪そう。。。

薬が届いて、若林さんを起こした。

『薬、飲めますか?』
『ああ…』

起こして、薬をとお水を渡す。

『飲んだら、寝て下さいね』

部屋の明かりを落とした。
もうちょっとしたら、僕も帰ろう。

『岬?』
『まだちゃんと居ます』
『俺、格好悪いな・・・』

なんか、優しい気持ちになった。
さっきもキスも嬉しかった。
でも
こんな風に傍に居るのも嬉しい。

『そんな事無いですよ』

傍に寄ってベットに腰かける。

『薬飲んだし、朝にはきっと良くなるハズです』
『なあ…』
『なんですか?』

若林さんの手が、僕の手を掴む。

『病気の時に、誰かが傍に居るのって…
 なんか…いいな。安心する…』
『・・・』
『岬、さっきの事』
『え?』
『さっきの返事、良く考えてくれよな。
 俺… 待ってる…から・・・』
『若林さん?』

スウッと寝息が聞えた。
繋いでる手が暖かい。

さっきの返事って・・・
つ…付き合おうって言われた返事?

正直、まだ自分の気持ちが分からない。

『帰ろう』

繋いでる手を離そうとするけど、
若林さんがギュウと握ってて離れない。

もしや起きてる???

額のタオルを裏返して、
若林さんの寝顔を覗き込む。
端正な顔立ち。
僕とは違って、そこはかとなく男っぽい。
逞しく引き締まった唇が・・・

急に思い出してまた体が熱くなって来た。


しばらく若林さんの手と格闘するけど
力が強くて全然動かない。
無理にして起こすのも悪いし・・・

『う…ん…』

若林さんが横に向いた。

『ま、いっか…』

僕も靴を抜いで布団に潜り込む。
ご馳走いっぱい食べたからかな?
さっき、緊張したからかな?
フワフワのお布団が暖かいからかな?
ううん、誰かが横に居るから
久々になんか安心する。

さっき、若林さんも言ってたよね。
そう、こんな時、誰かが居るだけで
安心出来ちゃうんだよ。

若林さんの手に、頬をつけた。
ご馳走いっぱい食べたからかな?
凄く…眠い・・・









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