『やっぱり…俺はいいよ…岬一人で行けよ…』
『ちょっとお弁当渡すだけだから…大丈夫だって!』

陽壱学園の食堂に足を踏み入れた。

『なんだよ、貧乏人が…飯がまずくなるぜ』
『ほんとホント』
『早く消えろよな』

聞えない、聞えない。
C4の溜まり場の階段を昇ると、
三杉さんと若島津さんの姿が見えた。 

若林さんが、居ない。

『お!昨日は面白かったよ』

座れ、座れと促されて僕と松山もテーブルにつく。

『君、部活に居るよね?名前は?』
若島津さんが嬉しそうに尋ねる。
『ま…マツヤマヒカ…松山ですッ!!!』
ニコニコの若島津さんを見て、三杉さんが首を振る。

すっかりカチンコチンの松山。
『今日、若林さんは???』
おそるおそる聞いてみた。

『なんか、源三のウチ、親父さんが戻ったらしくて』
『今日は朝から来てないんだ』

『そう…ですか…』

お弁当の包みをギュッと握る。

『もしかして、ソレ、源三に?』
三杉さんがなんか楽しそうに聞いてきた。
僕はやり場の無い視線をお弁当箱に落とす。
『昨日の御礼…と思って…』

うんうん、と嬉しそうに頷く。
『俺、今日はもう帰るから届けてあげるよ』
三杉さんが手を差し出す。
『え?』
『明日、九州の学会に招かれてて…もう帰るんだ』
『でも…』
『岬クンがお弁当作って来たのに渡さなかった、
 なんて知ったらきっと源三に殺される』
『大した物じゃないし…』

『岬クンにとっては大した事じゃないかも知れ無いけど
 源三にとっては凄い大事な事だから!』

僕の手からお弁当をスッと持ち上げた。

『じゃ、みんなごゆっくり。健、また明後日』
『お!淳も頑張れよ』

僕たちも失礼します、と言う言葉に
若島津さんが怒って、3人でランチ食べた。
なんか変な感じ・・・

『いいんですか?』
『何が?』
若島津さんがニコニコしながら聞く。
『僕達なんかとご飯食べてたら、C4の名折れですよ』
階段下の皆の視線が突き刺さる・・・

若島津さんがクスリ、と笑った。

『俺も淳も、もちろん翼も、そんな偏見持って無いよ』
『?』
『一番そう言うのにこだわってたのが源三だったけど、
 今は前に比べて柔和になったみたいだし』
『でも…』
『C4って呼ばれて、勝手に垣根作られて…
 ま、その分、余計な人付き合いには疲れないし
 モチロン、くだらない奴等と付き合う気も無いけど
 俺らだって普通の高校生だからさ!』

(どう考えても、普通じゃないけど…)

『それに、岬クンは特別だし!』
『岬が特別???』

松山が僕の顔をジッと見つめる。
ああああああああああ…
松山にはあんまり事情説明して無いのに!!!

『俺も淳も、岬クンの事は仲間って思ってるから』
『えッ???』
『岬、お前、凄いな…』

松山の疑惑の目が、憧れに変わってる。

『だって、俺達を庶民サッカーに連れ出したんだぜ!
 こんな凄いヤツ、今まで居なかったよ』
『しょ…庶民サッカー???』
『ま…松山、あのね…』

僕がちょっと説明する。

『今度、松山君も一緒にやろうよ』
『あ! ハイッ!!!』

え?
今、今度って言った?
若島津さんの顔を覗きこむ。

『若島津…さん?』
も… もしもし?
『なんか、昨日楽しくてさ、淳と帰りの車で
 また行こうぜ、なんて話してたんだ』

若島津さんがキラキラした笑顔を向ける。

『学園の連中は俺等にビビッて、マトモに目も合わさない。
 けど岬クンの友達は違ってたから・・・久々に楽しかった』

若島津さんが手に持ったフォークを置く。

『最初、源三が岬クンに構い出して、え?と思ったけど
 今は俺も知り合えて良かったって思ってる。
 源三も変わったし、翼もブラジル行ったし!
 俺も淳も色んな意味で毎日楽しいし(源三観察が)…
 コレって全部、岬クンが俺達に関わったからだよ?
 岬クンが・・・
 C4に革命起したんだよね!!!』

『僕???』
『そう、今までそんなヤツ、一人も居なかった』

若島津さんの顔がニヤッと歪む。
なんか急に恥ずかしくなってお箸を置いた。

『卒業まであとちょっと…大学も同じ敷地内だから
 ま、これからも宜しくナ!』

胸がチクンとした。
僕の気になってる事・・・・


『若林さん、本当にドイツ行っちゃうんですか?』

思い切って聞いてみる。

『ああ…前はそう言ってたけど…』
『そう…ですか』



  *******



ポケットの中で、三杉の携帯が震える。
取り出して通話のボタンを押した。
『健?どうした?』
『淳、もう源三の所か?』
『いや、思ったより道が混んでて…もうすぐ着くよ』
『ああ、なら源三に伝えてやって!』
『何を?』
『源三がドイツに行く話してたら、
 岬クンが泣きそうな顔してたって』

三杉が嬉しそうに笑った。

『分かった。たっぷり色つけて言っとくよ』



三杉を乗せた車が、若林邸に滑り込んで行く。










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