『どした?岬、傷だらけじゃんか』
『ちょっとね…なんでも無いよ』

今日は色んな事があったなあ。

『お前、陽壱学園でイジメられてるのか?』

小学校の時から知ってる小次郎。
僕と同じで家庭事情が苦しいから
一緒におでんの屋台でバイトしてる。

『違うよ、でも…僕…
 小次郎と一緒の学校に行けば良かったな』
『そうだよ岬、俺達が組めば絶対強いぜ』
『ホント、そうだよね・・・』

ぼくが大きく溜息をついた時、
銀色のベンツが止まった。

『なんかスゲエのが来たぞ』

もしや・・・若林?
手に持ってたネギを構えた時、
車から大空翼が降りて来た。

『うわ!大空翼じゃん』
『小次郎、知ってるの?』
『だって俺、大会とかで良く戦うぜ』
『あ…そっか…』

小次郎の居る東邦学園と、ウチの陽壱学園は
いつも全国大会まで勝ち上がってるから・・・

『岬くん』
『大空先輩』
『岬クンッ♪』
『あ!若島津さん…』

若島津さんが僕をジロジロ見回した。

『確かにね…』

確かにネ…って何だろう?

『保健室に迎えに行ったら居ないから心配で…』
『僕なら大丈夫です』

大空翼。
心配してくれたんだ。

『傷は?痛くないかい?』
『え…あ、ハイッ』

『良かった』

『翼のヤツ、岬クンが居ないって大騒ぎしたんだぜ』
『健…もういいよ』
『そんで急いで色々調べて、ココでバイトしてるって…』
『もう、いいってば…』

大空翼が若島津さんをこづいた。

『明日とか、部活出れそう?』
『大丈夫…と思います』

なんか思い出してきた。
僕、若林さんに青札撤回しなくてイイって言っちゃった。
サッカー部なんか、若林さんの取り巻きばっかなのに…
ちゃんと練習なんて出来る訳なさそう。。。

『俺達、今から源三の家に行くんだよ』
『えッ!!!』

ヤバイ。
さっきの事故の事・・・
なんか大空翼には聞かれたく無い。

どうしよう。。。


『あの…大空さんに若島津さんですよね?』
『え?ああ…君は…』
『俺、岬の友達の日向小次郎です』
『アレ?もしかして東邦学園?』
『ハイッ』
『知ってるよ、君、凄いサッカーするよね』
『夏も負けちゃいましたけど』

なんか横で小次郎と若島津さんの会話が弾んでる。

『岬クン』
『はい?』

大空翼が僕の手を握った。

『青札、源三に撤回してもらうから、
 明日も一緒に走ろう ね?』
『あ…』

『ホラ、翼行くぞ』
『うん』

大空翼が晴れやかに手を振って
銀色のベンツが走り去る。

『なあ岬、青札って何だ?』
『それは…』

しょうがないから、小次郎に説明した。
若林さんの事。 
事故の部分は抜かして。

『岬それさあ、改めてケンカ売ったって事?』
『多分・・・・・』
『そんなんでお前、サッカー部に居れんの?』
『分からない』
『ホント、どうしようも無かったら東邦に来いよ』
『そうだよね・・・』
『俺、推薦してやるからサ!』
『ありがとう・・・』

ほんと。
僕、どうなっちゃうんだろう。

『明日も一緒に走ろう』


大空翼の声だけが耳に残る。



**********************




門の前で大きく息を吸った。

『ヨシッ!!!』

もう、どうなってもいいや。
僕は僕。
岬太郎だもん。

若林さんになんて負けない。
絶対陽壱学園のサッカーをモノにして
父さんの居るフランスに行くんだ!

自分で自分の頬を打つ。

『僕は負けないッ』


校舎へと続く道を歩く。
みんなが僕を遠巻きに見てる。
やっぱり・・・
青札のセイだよね。
一日にして有名人。
せっかく、静かに学園生活を送ろうと思ってたのに。

『おはよう、みさきッ!!!』
『松山…』
『俺、覚悟決めたから』
良く見たら、松山の手に色んなモノが握られてる。
ハエ叩きとか鍋とか… って何故鍋???

『松山、ソレは???』
『やつらがどんな手で来るかわかんないだろ?
 だから俺も色々反撃してやろうと思って』
『松山…』
松山の勇気に、なんか涙が出てきた。
『なんだよ、岬泣くな!本番はコレからだぞ!』
『うん…ありがとう』

僕等が下駄箱に着いた時、
辺りがざわつき始めた。

『(ついに来たか)』

僕と松山が覚悟した時、3人が僕等の前に立った。
腕組んで、仁王立ちしてる。。。

『お前が岬かよ』
『なんだ、大した事無いじゃん』
『なんで若林さんがこんなヤツに…』

誰ですか?

『俺達の方がずっと長く若林さんの側に居たのに』
『そうだよ、何かの間違いなんだ』
『掲示板にあるから…仕方無いけど』

松山が僕にそっと耳打ちした。

『こいつら、来生、滝、井沢。
 幼稚舎から若林さんの舎弟なんだ』

舎弟さんが僕に何か用?

『俺達はお前の事、絶対認めないからな!』

くるっと僕に背を向けて僕の前から居なくなった。

『何だろう?今の…』
『岬、掲示板見に行ってみようぜ』
『う…うん』

掲示板の前に、人だかりが出来てた。

『来たぞ、アイツだ』
『マジ?若林さん…なんであんなヤツの事…』

『ちょっと…すみません…』
僕等は掲示板の目の前に立った。


     昨日の青札撤回。
     今後 岬太郎に何かあったら
     この俺様が許さねえ
              若林源三

『は?』
『岬、良かったじゃん!』

青札。
なんで?
なんで撤回したんだろ?

もしかして、大空翼が何か言ってくれたのかな?



僕が教室に入っていくと、
ざわついてた教室が一気に静まり返った。

もおおおおおお〜ッ!!!
青札撤回されたのは嬉しいけど
みんなに注目されて緊張しちゃうよ。
若林源三…
なんか… ホント むかつく。

『松山…なんか変な感じ』
『ほんと、俺のセイだから…ごめんな』

でも、こんな時、僕の気持ちを分かってくれる
松山が近くに居てくれて良かった。
どんなにみんなに注目されようが、
僕には父さんとの約束があるもん。

よしッ!
ガンバロウッ!!!

四時限目終了のチャイムが鳴る。

『岬、昼飯食おうぜ』
『あ…うん』

僕等が屋上に行こうと席を立つと、
クラスメートがザッと道を開けた。

『何?』

目の前に、にっくき若林さんが立ってる。

『岬、昼飯食うぞ』
『は?』

驚いてる僕の手をいきなり掴んで
グイグイ引っ張って行く。

『ちょ…待って下さい!』
『うるせえ!いいから来いッ』
『松山〜ッ・・・』
『まあまあ、岬君、今日は僕等と一緒に食べようよ』
み…三杉さんまで・・
『そうそう、タマにはいいじゃん』
ひええ〜若島津さんも???
『今日は翼も居ないしちょっと付き合ってやって』

三杉さんと若島津さんに免じて、
今はおとなしくしてみよう。。。


『ホラ、コレも食え』

初めて踏み入れた陽壱学園の食堂。
なんか、高級なレストランって感じ。

『うわぁ〜凄い』

キョロキョロ見渡してる僕の隣で
若林さんがプレートにどんどん料理を盛って行く。
見た事も無い、分厚いステーキやら
色とりどりの野菜やら・・・

『若林さん、随分沢山食べるんですね』
『は?俺んじゃねえよ、お前が食うんだ』
『え?』
『お前、ガリガリだからな』

だってココのランチ、8000円くらいするんだよ。

『ぼ…僕、お金無いし…』
『うるうせえ!お前に金を出させるような
 そんなヤボな教育…俺は受けてねえんだよ』

またもや、意味不明…

『で…でも、悪いし…そ…それに僕、お弁当有るし!』
手に持ってたお弁当箱を前に掲げる。
若林さんがチラと視線を向けた。

『弁当は…俺が食う』
『え???』

呆然と立ちつくす僕を前にスタスタ歩き出す。

『早く来い』
『は…ハイ…』

若林さんについて2階への階段を登る。


『オイ、見ろよ、ボンビー岬だぜ』
『なんでC4と飯食ってんの?』
『俺達だって一回も一緒に食べた事無いのに!!!』

あの、来生、滝、井沢って3人の姿が見えた。

『気にするな』

なんか、青札以上に凄い事になりそう・・・


『ホラ、ちゃんと食えよ』
『あの…僕、こんなにきっと食べれな…』
『いいから!』
ひえええええ〜ッ 怖いヨおお〜ッ!!!

『い…頂きます・・・』

仕方なく、目の前の肉にフォークを刺す。

ぱく。

『お…美味しいッ!!!』

びっくりした僕を見て、
若林さんがプッと笑い出した。

『良かったじゃねえか』
『は…ハイ…ありがとうございます』

なんか、どれも美味しくて、
結構夢中になって食べちゃった。。。
『お前、ウマそうに食うな』
そんな僕を、若林さんが肘をついて
楽しそうに見てる。
そんな風に見つめられると
この間の事、思い出しちゃうよ。

なんか、ホント、変なの・・・


『お前の弁当は?』
『あ…でも、こんなの美味しくないから…』
『でも、お前が作ったんだろ?』
『え?』

なんでそんな事知ってるんだろ?

『岬クンってずっと旅してたってホント?』
『親父さんと2人暮らしだったんだよな?』

三杉さんと若島津さんが僕の話を始める。
ああ…僕のウワサ、知ってるんだ。

『よこせよ、弁当』

こんな美味しい料理を毎日食べてる人に僕のお弁当?
絶対口に合うはず無いのに。。。

躊躇ってる僕の手から、お弁当箱を奪い取る。

『だ…ダメです!!!』

って…言ってる側からもう開けてるよ〜ッ!

『結構ウマそうじゃん』
『え?』

パク と若林さんが一口食べる。
『…』
あ やっぱりマズかった???

『オイ、無理すんなよ、源三』

こらこら、若島津さん、どう言う意味?

『うめえ…』
『え?』

『なんか知らねえケド、ウマイ』

そう言ってパクパクとお弁当食べ始めた。


『なあ、コレ、何』
『こ…これはきんぴらごぼうです』

本当に、美味しいと思ってるのかな?

『まあ、源三にとっちゃ何でもウマイよな』
『そうそう、岬君が作ってるんだもん』

またも意味不明。
僕が作ったから?

『なあ、コレは?』
『え…えのき茸のベーコン巻きですよ』
『いそぎんちゃくみてえで面白いな』
『いそぎんッ?』
『味も個性的!』

たいして美味しいとは思えない僕のお弁当。
なのに、若林さんは美味しそうに平らげた。

『ウマかったけど、もっといい食材使え』
『食材?』

そ…そりゃあスーパーの特売日にまとめ買いした
ちょっぴりお粗末な食材だけどさ・・・

『俺んちに沢山あるから、やるよ』
『源三の家は専用農家と提携してて、
 米も野菜もすげえウマイぜ』
『僕、一人暮らしだし、
 そんなに食べないから要らないです』
『うるせえ!』

またそんな大声出されても…

『お前、ガリガリなんだから。
 んなんでサッカー出来ると思うのか?
 もっとちゃんと食え』

アレ?

もしかして僕の事、心配してくれてんのかな?
このランチだって。。。

『若林さん…』
『なんだよ』

『ありがとう』

言葉にはあんまり出さないけど、
若林さんが心配してるのが伝わって来る。

『源三、いいトコあるじゃん』
若島津さんが若林さんの肩を叩く。
『うるせえぞ』

一人の時間が多いから、
人に対する接し方を良く知らないのかも。

『でも、ランチはもういいです』
『え?』

そう。
僕は一人でも
ちゃんと強く生きて来たから。

僕の
誇りなんだ。

『このランチ、とっても美味しかったです。
 でも、今の僕には不釣合いな感じがして…
 今日はご馳走様でした』
『おい…』
『今日の部活は、沢山走れそうです』

笑いかける僕に、若林さんがポツと呟く。

『たまには…一緒に…メシ食おうぜ』
『いいですよ、でも僕はお弁当食べます』
『てめえ…人の好意は素直に受けやがれ!』
『押し付けの好意は今後受け取りませんから』
『ブッ殺す』
『さすがワガママ坊ちゃんですね!』
『コイツ…』

若林さんの手が、僕の頭をグリグリ掴む。
あはは…と笑い合った僕等の目が合った。

思い出す。
僕達が触れ合った時…


途端に顔が熱くなって来た。
でも    アレは 事故で…

急にパッと若林さんが手を離した。

『なんだよ、お二人さん、顔が赤いよ』

み…三杉さん。。。
頼むから今は言わないで!

『じゃ…じゃあ、今度は無理やり誘わねえから
 俺の弁当も作って来い』
若林さんが真っ赤な顔で僕を見る。
きっと   ・・・  僕の顔も赤いハズ。
『・・・いいですよ』

奪い取るようにお弁当箱を掴む。
ダメだ…
思い出したら止まらない。。。

『じゃあ、僕行きます』
『放課後…部活でな』

若林さんも真っ赤な顔してそっぽ向いたまま。

『なんだよ、源三…お前も部活出るの?』
若島津さんの呆れた様な声。
『ま…まあな』

『じゃあ岬クン、またね』

ニッコリ笑った三杉さんに見送られて
僕は一度も振り返らないまま、食堂を後にした。


*************



『源三くん…愛しの岬クンのお弁当はどうだった?』
『お前、無理してんじゃねえの?』
『…テメェら…ブッ殺されてえのか』
『正直、源三が無理してるんじゃないかと思ってるんだよ』
『弁当はマジでウマかったよ…でも、
 なんだかわからねぇモン食ったって感じだった』
『所詮、源三とは生活レベルが違うから…』
『三杉…てめぇッ』
『なんでそんなにホレちゃったんだ?』

若島津の問に
暫く若林が考え込む。

『やっと…』
『え?』

『やっと見つけたんだよ』

ぶっきらぼうに答える若林に、
三杉の優しい笑顔が浮かぶ。

『あんな弁当一個じゃ足りねえから何か取ってくる』

照れ臭そうに席を外した若林を
若島津が溜息混じりに見送る。

『ホント、最近源三変わったよな』
『岬クンにマジなんじゃないかな』
『岬クンはどうなんだろうねえ…』
『まんざらでも無いって気もするけど・・・
 源三の気持ちが届いてるとは思えないなあ』
『アイツ、強引だから』
『そして岬クンは鈍感そうだし…』

二人でニヤリと顔を見合す。

『ココは源三のタメに・・・』
『ひと肌脱ぎますか!!』



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