『じゃあみんな、元気で』
『ロベルト、また日本に来て下さい』
『健…ありがとう。淳も元気で』
『目の結果、またお知らせします』
『ああ、頼むよ…源三も元気で頑張れよ』
『ロベルトも』

C3に囲まれて、ロベルト本郷が爽やかに笑う。

『翼、来ないね』
『ったく…何やッてんだよ』

三杉さん、若島津さんがチラチラと時計を気にする。
僕は少し離れた所からみんなの様子を伺った。
ロベルト本郷の寂しそうな笑顔。。。
はあ。なんか昨日の今日で、ちょっと会いにくいや。

『あ…岬クン』

ロベルト本郷が僕の姿を見つけて近寄って来た。

『昨日はありがとう』
『え?』
『俺、翼に対する気持ちを
 誰かに話したのは初めてだったんだ』
『・・・』
『君の翼に対する気持ちが嬉しくて。
 君の暖かさが翼を変えてくれる気がするよ』
『あ…』

昨日、僕、大空翼を怒らせちゃったんです。。。
しゅんとなる僕の手をギュッと握った。

『本当に、コレからも…翼をヨロシク』
『ロベルトさんも・・お元気で』

ニッコリ笑って、ロベルト本郷はゲートに消えた。
みんなの啜り泣きが聞こえて来る。

『なんだよ…岬いつの間に居たんだ?』

呼びかけられて顔をあげると、若林さんが居た。
『お前、なんでロベルトとあんなに仲良いんだよ』

またちょっとムッとした顔。
あれ?そう言えばこの数日間、
若林さん、僕に構ってこなかったなぁ。
僕が気にしてなかったダケなのかも…

『岬、なんとか言え…』

僕に伸ばした手がピタと止まった。

『翼』
『え?』


振り向くとソコに、大空翼が居た。
昨日とはうって変わって 晴れやかな 笑顔。

『なんだよ、ロベルトもう行っちゃったぜ』
『翼…お前いつから居たんだよ』

C3が走り寄って大空翼が笑った。

『うん、一時間くらい前かなぁ?』
『じゃあなんで来なかったんだよ!』
『ロベルト、最後までお前を待ってたんだぞ』

若島津さんも三杉さんも心配そうにしてる。

『うん…でも柱の影からちゃんと見てたから』

は…柱の影???
なんか、カチンと来た。
ロベルト本郷は大空翼に誠実だったのに
なんで最後が柱の影から… な 訳???

『ば…バカかお前はッ』

大空翼に詰め寄った若林さんを押しのける。

『大空先輩…バッカじゃない?
 ロベルト本郷がどんな気持ちで居るか
 大空先輩だって知らない訳じゃないのにッ!!!
 いつまでも逃げてたら、本当に大事なモノは
 絶対に手に入りませんよッ!好きならどこまでも
 追いかけて行けばいいじゃないですか!!!』

怒るかと思ったら…
大空翼はニッコリ笑って僕を見た。

『岬クンの言う通り。俺…ずっと後ろ向いてた。
 昨日の岬クン見て、ガツン と来たよ。
 俺もこのままじゃいけないって思った』
『なら何で…』

大空翼がゆっくりと、
コートのポケットに手を入れる。

『行くよ、ブラジル』

大空翼の手に握られたチケットが
僕の目の前で大きく揺れた。

『次の便で追いかける』

『お…大空先輩…』

なんか、涙が出てきた。

『俺、ちゃんとロベルトと向き合って
 聞けなかった事、言えなかった事、
 俺の気持ち、ちゃんと話して来る』

大空翼が、一歩僕に近づいた。

『岬クン、ありがとう』

僕のオデコに大空翼の唇が触れる。

『君に会えて良かった』



手を振って、ゲートに消える姿が
眩しくて見えなかった。

良かった…
大空翼が自分の意思で
自分の道を歩いてる事。
昨日はどうなるかと思ったけど
大空翼にまた、
あの笑顔が戻った事。

良かった・・・





『翼、やる時はやるな』
『ああ…久々にあいつの笑顔見た気がした』

沢山の飛行機が轟音と共に空港を飛び立つ。
若林が眩しそうに空を見上げる隣で、
三杉と若島津が言葉を交わす。
『岬クンが翼を説得したのかな?』
『う〜ん…俺はてっきり・・・
 岬クンって翼を好きだと思ってた』
『俺も』
『2人、息ピッタリだったしな…』
『翼だって岬クンへの執着は凄かったのに』
『俺にはわからないけど…』
『なあ、源三、お前はどう思う?』

若林が振り返ってニヤリと笑う。

『岬が翼を好きだなんて…んな訳ねえだろ』

『全く…その自信はどこから来るんだか…』
『ホント、この2,3日、落ち込んでたくせに』
『お前らちゃんと翼を見送れッ』

三杉と若島津の向こうに、
ポツンと立つ岬の姿を認めた。
若林がそっと近寄って行く。

『岬』

呼びかけた声は轟音に紛れて
岬の晴れやかな顔が見えた。
眩しそうに空を見上げる岬に
若林の鼓動がどんどん早くなって行く。
小さい頃自分が宝物だと思っていた
夕方にしか会えない友達。
夕日に照らされて揺れる髪。
キラキラした楽しそうな瞳。
今、自分の目の前に映る光景に
若林の心が強く奪われた。




大空翼。
良かったね。
自分に正直になるって
とっても怖いことだけど
ぶつかって壊れたとしても
その方がきっと
後悔は少ないハズだから。

大空翼が決断してくれた事、
僕は凄く嬉しく思ってる。



『岬…』
『あ…若林さん…』

なんか、照れ臭そうな顔して
僕のすぐ隣に立った。
なんか忘れてたけど、やっぱり
若林さんの側に居ると緊張する・・・

また一機飛行機が地上を離した。

『岬、デートしようぜ』

え?

飛び立つ轟音に紛れて
よく聞えなかったけど…
今・・・
で・・・
デートしようって言った?????


『えええええええ〜〜〜ッ!!!』
『日時は後から言う』

な?
何言ってんの???
この人・・・

固まってる僕を残して、
若林さんはそのまま歩き去った。






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