ヒトヒラノキョリ

校門を抜け、校舎へと続く道には、薄紅色に彩りはじめた桜の木が、
真新しい制服に身を包んだ新入生を、優しく出迎えてくれる。

自分たちが、これから三年間過ごすことになるこの学び舎を、期待と
不安で見つめている新入生たち。

この光景を見るのは今年で二度目だ。まぁ、去年は自分も彼らと同じ
ような瞳をしていたのだろう。

桜並木を歩きながら、岬は少しだけ遠い昔を思い出す。




留学先のフランスから日本に戻ったのは三年前。その年に教員試験を
受け、この学校に美術教師として赴任したのが昨年のことだ。

教師になるきっかけは、留学先でのフランスで、ある少年に出会ったこと。
その時に人に伝えることの大切さを学んだ。人に伝える術は、きっと言葉
だけではないはずだ。そのことをたくさんの人に知ってもらいたい。

その気持ちを海の向こうにいる恋人に伝えると受話器の向こうからは、

「留学期間が終わればこっちに来るって言っていたじゃないか」

とあきらかに納得できないという思いが伝わってくる言葉。

あの少年に会う前の自分はそうするつもりだった。でも、以前からすべて用
意された生活に不安を感じていたのも事実。

「日本に戻ったらもっと会えなくなるんだぞ」

「ガキなんか相手にする必要ないだろう」

「襲われでもしたらどうするんだ」

と最後はよく解らないことを言い出したのだけれど、一生懸命自分を引きと
めようとする恋人に、罪悪感を感じながらも、僕は最後までその生活を選ぶ
ことが出来なかった。

そうして、結構強引に僕が日本に戻った後も

「こっちはいい季節だぞ、絵を描くのはもってこいだ」

「やっぱりダメだ。このままじゃ、いつか襲われる」

とか何かにつけて(どうして男の僕が襲われるんだ?)いろいろ言ってきた
恋人が、最近さっぱり何も言ってこなくなった。あきらめたのだろうか?
それとも・・・脳裏に浮かんだ考えを岬は頭を振って打ち消した。




「岬先生、理事長がお呼びですよ」

職員室についてすぐ、教頭にそう言われ、岬は理事長室に向かっていた。

「理事長が?」

そう聞き返してしまうほど、今まで理事長に声を掛けられるという事はなか
った。理事長直々に一体何の用があるというのだろう?不可解に思いなが
らも理事長室の扉を叩く。

「岬です」

「あぁ、入ってくれ」

部屋から聞こえた思わぬ声に、岬はここが理事長室だという事も忘れ、
勢い良くドアを開いた。

そこには、デスクチェアーに深く腰を掛け、魅力的な笑顔を浮かべる岬の
よく見知った人物。

「若林くん」

突然のことに頭が付いていかない。

「どうして?」

岬の言葉に若林は答えるように立ち上がり、岬に向かって歩き出す。

「どうして?」

本当にわからない?その目はそう言っている。

解らないはずがない・・・

いつでも彼は僕のことを一番に考えてくれる。

無言で頭を振る岬を若林はやさしく抱きしめる。そんな若林の背中に、
岬も思いっきり手を伸ばす。

「頑固な恋人を持つと苦労するよ」

肩をすくめて大げさに息を吐く若林だが、瞳はとてもやさしかった。

何か、彼にしてあげたくなって、岬は上目使いに若林を見上げると、
そっと口付けをする。

少し驚いた顔をした若林だったが、もちろんそれだけで満足する訳もなく

「んっ」

激しい口付けを返す。久しぶりに触れた恋人の温もりに身体が熱くなっ
てくる。口付けは唇を離れ、首筋に降り、さらに若林の指先は岬のネク
タイを解いていく。

「ちょっと、待って。ここ学校」

これ以上は後戻りできない。もうすぐ入学式が始まろうと言うのに、岬
のワイシャツのボタンを起用に素早く外していく若林の手を岬は慌てて
掴んだ。

「気にするな」

そう言って、手を止める様子のない若林の顔を今度は両手で挟む。

不満そうな顔・・・

「入学式で挨拶するんでしょ」

その言葉にため息を付いて頷く。

「まぁな」

確かにここで問題を起こすわけにはいかない。岬に話すつもりはないが、
これでも結構日本に戻ってくるのは大変だった。留学期間を短縮し、ここ
の経営権を貰うため、親の嫌な頼まれごとも引き受けたのだ。

「じゃあ、式の準備もあるからもう行くね」

すっかり身支度を整えた薄情な恋人はドアに手をかけ、

「今夜は若林くんの食べたいものを用意しておくからね」

そう言い残し、部屋から出て行った。

「食べたいものねぇ・・・」

そんなの一つしかないだろう。色っぽい顔をして出て行った恋人を思い
浮かべる。

「しかし、危ないよなぁ。アレは」

この部屋の窓からはちょうど校門が見える。若林は岬が登校してきた
時に、ここから見ていたのだった。女生徒のみならず、男子生徒、父兄
まで、岬を見かけたみんながみんな振り返っていった。

「さて、どうやって辞めさすかだな」

日本に戻ったからと言ってあきらめた訳ではないし、今日のことで更に
思いは強まった。しかし、あの頑固な恋人のこと、一筋縄ではいかないだろう。

きっと攻防戦はまだまだ続く。

『フフフ…若林理事長…
アナタが権力を振り回そうと
我が校は岬先生を手放す気なぞ
毛頭ありませんよ…』

理事長室のドアを見つめながら
ヨネスケ校長が呟き… ましたトサ★

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かっこいい源三さんを目指したんですが、
ヘタレが抜けきれて ないような
気もしたりなんかしたり?


衣千胡様〜*゜ー゜)ノ
ステキなお話をありがとうゴザイマシタ〜★
私は衣千胡様のゲンゾさんダイスキ〜♪
うぎゃ!オイラも岬先生に美術習いたい。
で、モデル頼むにゃ。裸の… >黙れ
本当に本当にありがとうゴザイマシタvvv

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5×3






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