Red Sky



その答えは僕の中にある。






























窓に映る雲の羅列。
まるで踏みしめたら
心地よく沈みそうだよ。



この飛行機が着いたら
ボクの答えを



癡ム君に伝えたい。










ずっと前、考えても考えても
出なかった答えが



考えても考えても
気付けなかった答えが





最近のボクを苦しめていて





ずっと前、聞いて貰えなかった答えが
ずっと心の中に渦巻いていて
何年も何年もずっと考えていていたけど
















僕ゥ身が答えを出したくなっちゃったんだ。















____________________













父さんがその日 僕に言った。
『絵が完成した』




それは次の土地へ移るって事。
『友達にも言っておくんだぞ』






『うん』





僕の答えはいつも2文字。





だってそれ以外に
vいつかないんだもん。


僕は父さんと旅をしていて
いつも仕方の無い事だと受け入れてたのに
今回だけはチョット違う。。。






違うんだ。






全国大会で優勝した。

僕にとっては
いつも途中で別れてしまう仲間と
1つの事を最後までやり遂げた

本当に些細な、
大きな出来魔ノ出会ってしまった。







翼くんとか、みんなとか、
本当にこの町に来て 
良かった    って思ってる。



なのに。






また


お別れの時が来ちゃったね。













今日もまた
何の用魔燒ウいけど
土閧ノ行こう。




そうしたら


僕の答えも
見つかるかも知れないよ。

























『岬』




呼ばれて僕は振り向いた。




紅い夕日が僕の頬を刺す。


昨日までは
『いつまで続くかな?』
って不安だらけの毎日だったのに
今日の僕は その答えを知っている。






『なんだ、今日も居たんだ』


癡ム君がちょっとホッとした顔で
僕の横に腰をかけた。


『オヤジさん、今日も遅いのか?』




僕、知ってるんだ。
癡ム君が毎日通院していて
コノ條ヤに此処を通ること。



『足、大丈夫?』

癡ム君がそのオレンジ色に負けない
畤しいくらいの笑顔を向けた。


『うん、だいぶ翌ソ着いてきた』





僕らの時間が止まる。




『なんだ、岬、今日はやけにおとなしいな』














ダッテ ボク

モウ ジカンガ ナインダモン



ワカバヤシクント ココデアエルノモ

モウ

カゾエルホドシカ ナインダ











『ううん・・』


『俺、出発の日が決まったぜ』
















その言葉がボクの心を刺した。





出会って、触れ合って
笑って話して
優しくして
優しくされて
分かち合って



ちょっとその人の事を知った瞬間に
また、別れがやって来るんだね。





『そうなんだ』














ボクの笑顔もきっと負けてない。

この夕日と同じくらい、
癡ム君の選択を喜んでるよ。














最近、僕がコノ條ヤを大切に思ってる事。
きっと若林君は知らないよね。


最近、僕がコノ條ヤを楽しみにしてる事。
きっと若林君は気が付いてないよね。






なんでだろう。
とっても      いつでも
癡ム君に会いたくなるよ。







その、無限の可能性を追う
癡ム君の話を聞いて



ボクの胸がワクワクすること。











僕達ってこれからも
きっとどこかで繋がって行くと・・・
ボクが勝閧ノ思ってること。




本当は この優しい時間が
いつまでも続いて欲しいと



ボクが勝閧ノ思ってること。





本当は


癡ム君に知って欲しい。

















隣に座った若林君が
ボクにそっと呟いた。







『岬もどっか行くのか?』




まるで一枚の枯葉が
吹きすさぶ風に巻かれて
その身を任せるかの様に


さりげなく響く一言だった。



『多分・・・父さんの絵が完成したから』











昨日まで楽しみだったこの時間。






今は












泣きそうだよ。






















『俺・・俺さ、毎日岬と会うの、
 タは楽しみだったんだ』








癡ム君がその横顔を伏せる。




『本当は車で行けとか言われてんのに
 岬に会いたいから歩いて行こうとか・・・』




更に帽qを引き下げた。




『通院するのはイヤだけど
 岬に会えるかも  って毎日思ってた』






條ヤがボクに味方した。






『あはは。俺、何言ってんだろうな』
癡ム君がボクの隣で乾いた笑いをあげる。


『でも、もう会えるの、何回も無いし』














癡ム君の出発は来週。
ボクの出発は明後日。
皆には明々後日って言ったけど
それは別れが辛くなるから。


ホントはもう、明日しか会えないんだ。





明日。
キミとのこの優しい時間も


もう、
明日でおしまい。









_____________________










大会が終わっていつの頃からか、
父さんが居ない家にいるのもつまらなくて
1人で夕方、土閧ワでブラブラ歩いて来た。

『もうじきお別れかぁ』

父さんの絵の完成も近いから
なんとなく、なんとなくわかってた。



『岬じゃん』



その言葉に振り返ると
そこに若林君が立ってた。



『何してんだよ』

『父さんが遅いから・・・  U歩』

『そっか。俺、病院』


癡ム君がズボンの裾をチラとめくると
痛々しいテーピングが白く光る。



なんとなく2人で土閧ノ座って
ポツポツ話し出した。



『俺さ、日本を代表するような
 スゴイGKになりたいんだ』


『癡ム君なら絶対なれるよっ』




うん。
そんな気がする。


絶対、
なれる気がする。




『大人になっても
 またみんなで詩オたいな』





癡ム君が優しい笑顔を向けた。


『うん・・・・・』








その時、僕は何所に居るんだろう。









『なあ、岬、明日も会える?』


突然、癡ム君が僕に聞いた。


『? いいよ・・・』

『じゃあ、明日もここで』


ちょっと照れ臭そうな顔をしながら
癡ム君が立ち上がった。


『うん』


僕も立ち上がってズボンを払う。



『また、明日な』




僕たち、本当の友達みたいだ。
そのまま2人、違う方向に歩き出す。





でも    大丈夫。


また明日も


会えるから。







_______________________







通り抜ける風が水面を撫でる。
紅い夕日が僕らを包む。

前進する時計の針は優しい。


言葉を紡ぐのに忙しくて
その横顔が優しいのに

僕は気が付く暇がなかった。




癡ム君。

僕らの出会いは街の中だったね。
ボクが蹴ったボールを受け止めたんだ。

敵になって
それから一緒に戦って

小次郎との詩フ時も
最後までずっと
ボクの事を気にかけてくれてたね。







『岬が明々後日に出発なら
 もうあと2回しか会えないんだ』


『うん』


『なんか、やっぱり寂しいな』




零れ翌ソそうな涙を堪えて
僕はゆっくゆ踞いた。



『でも、きっと・・・』


僕が呟いた先を若林君が受け取る。






『サッカーしてれば、またいつか会えるって!』








僕らは同時に笑い出した。



















『なあ・・・ 岬』


しばらくして
癡ム君が固い声で僕を呼んだ。


『俺さ、いつも周りのヤツからは
 ”ちょっと毛色の違う同級生”みたいに扱われて
 俺自身も別になんとも思ってなかったけど
 
 岬とこんな風に喋ってると ・・・その
 本当の友達って気がしてるんだ』

コホン と小さく咳払いする。
僕は黙って若林君を見てた。


『俺、ゥ分が旅立つにあたって
 一度も別れを寂しいと思った事は無いけど

 岬と別れるのは なんか・・・辛いな』


『だけど岬がドコにいても 俺・・・
 岬を応援してるから』






僕の胸がドキドキ波打つ。


このドキドキが
癡ム君にも聞こえたらいいのに。






『岬とずっと一緒に居れたらいいのにな』









そう言って立ち上がる。


『また明日』











僕を残して歩き汲驍サの姿。
僕は小さく、小さくなるまで見届けた。



いつもは気揩ソを押し込めて
絶対に絶対にそんな事はしないのに。





今日、僕は自分の流す涙を拭った。





































ずっと   ずっと
僕は気が付かない振りをしてたんだ。

だって思い出すと悲しくなるから。




あの頃はまだ子供で
ゥ分の気揩ソに知らん振り出来た。


でも、僕もフランスに来て大分経つ。
父さんが初めて

『どこか行きたい所が有れば1人で行っていいぞ』


僕が大人になったから
父さんが認めてくれた証拠。






もし
あの時の気揩ソが本物なら






僕 癡ム君に会いたい。


















『当機は間もなく着陸態勢に入ります。
 皆様お席にお戻りになってシートベルトを・・・』














ベルトを絞めてから
もう一度窓の外を垣間見る。






ずっと ずっと 考えてた。

あの時、癡ム君の言った言葉。






『僕は全てを受け入れる、だから岬も俺を受け入れて』






言葉では言えなかった言葉。







ずっと ずっと 
僕の胸に響いてる。






窓の外に グン と街が近づいた。



もし 癡ム君が僕を友達としか思って無くても
僕は自分の中で 気がついちゃったんだ。





あれから新しい土地に行ったよ。
新しく友達も出来たよ。


だけど
誰も若林君にはかなわない。






癡ム君が言葉にしなかった事
僕の中で答えを出しちゃったんだ。




その、片鱗だけでも伝えたい。



























_____________________



『岬』



練習の途中に御邪魔したのに
癡ム君は僕を優しく受け止めた。





あの日の事がまるで無かったかの様に。








2人でベンチに座る。


『よく来てくれたな、岬』

『あ。。あのね』






今にも飛び出しそうな心臓が
僕の中で跳ね返る。



『何年か前、俺、あの日も土閧ノ行ったんだ』





癡ム君が核心に触れる。




『ホントは岬に言いたい事があって・・・
 だけど岬は来なかったから』






責めてない、優しい瞳が僕を貫く。








『僕・・・』

『でも、いいや。
 こうやって岬が会いに来てくれたしな』










最後の日。
僕はいつまでも
いつまでも窓辺に座ってた。


父さんに言われるままに
荷物をまとめて

明日には汲
そのアパートで
沈む夕日を眺めてたんだ。

癡ム君が
きっと僕を待っててくれると
本当は思ってたのに
僕は家から出れないでいた。

だって
最後の言葉を聞いちゃったら

多分
僕は ココから離れられないで居る。



僕のとまどいも
きっと若林君にわかっちゃうから

だから僕は
ずっと一人で
その夕日を眺めてたんだ。




本当はスグにでも駆け出したかったのに
なんだか父さんを裏切る気がして

癡ム君を想う気揩ソが大きすぎて
僕の足は動けないで居た。



だって
ゥ分がそんなに若林君を好きだなんて
 
ずっと  ずっと
知らなかったんだもん。



















『岬』


癡ム君の手が
僕の頬にそっと触れた。


『なんで 泣くの?』











ずっと ずっと
溜め込んでいた想いが
一筋の涙になって零れ翌ソる。



前に逃げ出した時とは違うよ。
僕は今、答えを持ってる。




『泣かなくていいよ』











追求する代わりに、
涙の訳を問う代わりに


僕をそっと    
その胸に抱き寄せた。
















『何年も前に言えなかった事、言うぞ』















言葉が胸元で振動になって
僕に伝わってくる。













『岬が好きだ』














僕の手が
癡ム君のシャツを掴む。














『好きなんだ』

























ドイツの町に
赤い夕日が翌ソていく。











それは  きっと
本当は

何年も昔に
一緒に眺めた

あの日の夕日かも知れないね。











ずっと ずっと
胸の中にしまってきた答えを



僕は静かに口にした。

















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