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胸に心地よい重みを感じて
浅い夢の中から現実に引き戻された。

朝の光がカーテンの隙間を通して降り注ぐ。

うつ伏せに眠る岬の形の良い手が
オレの胸に下ろされていて
浅い寝息と共に軽く上下する。

なんて言うのかな、
思わず微笑みたくなるってのは
きっとこう言う瞬間なんだろう。

その手を優しく撫でてから、
そっと上掛けの中に入れて
肩まで布団を引き上げてやる。


春はもうすぐ先で
まだまだ寒い毎日が続く。



何度頭の中で描いても
いつも想い出は現実よりも色褪せて
目の前に居る岬より
煌いて見えることは無い。

いつもいつも頭の中を
何かが占めてる現実こそ
思い描く想像を遥かに超えて
俺の胸を躍らせて行く。

『岬・・・』

オレのエゴかな?
それとも岬の見ている
夢にまで嫉妬してるのかな?
岬の瞳に俺を映して欲しくて
その柔らかい頬に指を滑らせた。


『・・・おはよう』


何度か目を瞬かせて
俺の前でまた奇跡が起こる。





俺の告白を受けてくれた岬。
その時は信じられない思いでいっぱいだったけど
こうやって何度も側に岬を感じて
その瞳が俺を捉える奇跡に遭遇して
自分の中で新しい自分が生まれるのを感じている。


俺の隣にいつでも岬が存在して
俺が自分同様に守らなければならないもの、
ともすれば自分以上に大事に思って
互いを尊重する事、ただ、側にいて
その息遣いを聞いているだけでいい、
俺の前で幸せそうな笑顔を見る度に
自分はこの為にここに存在するんだ、と
そんな風に思いたくなるような笑顔。



もっともっと自分が強くなって
もっともっと己の信じる道を歩んで行くから、
そこに必ず岬が隣にいて欲しい。




もっともっと、俺、強くなるから。
ずっとずっと、岬の事を、2人の事を守るから。
だから必ず岬が隣に居て欲しい。




『いい天気だね』

岬がもぞもぞ身体を動かして
俺の方に身体を向けた。

その瞳がまっすぐに俺を射抜く。


どんなに相手の事を想っていても
その想いが伝わっているか
相手の発する言葉の裏に真実が潜んでいて
俺は懸命に探そうとしてるけど
岬の心から発する言葉から
そんな片鱗も見つけた事も無い。
だからこそ、拭えない不安。
だからこそ、湧き上がる新たなる決意。
だからこそ・・・

『若林君?』

岬の手がゆるゆる伸びて
俺の頬に触れた。

その、暖かい手の温もり。

岬と俺が生きていて
現実に向かい合っている唯一の証拠。
いつか、骸になって横たわる時も
今、この瞬間の暖かい手を
握って居ることをきっと思い出す事もあるだろう。



『なんか今、すげえ感動してた』


俺の答えに岬が笑う。
俺にとっては笑い事じゃあ無いのに。

『僕なんていつも感動してるよ』

岬の手を掴む。

『僕がずっと想ってて、絶対に届かないと思ってたのに』

岬の目が優しく笑う。

『若林君から言ってくれた瞬間から、いつも』





俺は今まで余り後悔した事が無い。
後悔したのは自分がやらなかった事、
自分が現実に叶えなかった夢、
自分がやり損ねた事だけだ。

戦いに負けても、自分に負けなかった事
その時は悔やんでも、それはいつも
俺を次の段階へ運んでくれるステップと受け取った。
だから、後悔した事は 無い。


『後悔したくなかったんだ』

岬の隣に滑り込んで
その小さなオデコに自分の額をつける。

『俺は言わないより
 言って後悔しようと思った』

岬が小さく頭を動かした。

『若林君は・・・  強い』

『俺?強くなんてないよ』

『ううん。僕は言って後悔したくないから言わなかった。 
 言ってしまって壊れちゃうのが嫌で、言えなかった』


岬の後悔は俺と正反対なんだ。


『だから言ってくれた時、本当に嬉しくて

岬の睫が俺の頬を撫でて小さな風を起こす。

 初めはずっと信じられなかった』



今の世の中で俺達の思いは
どこにも受け入れられないかも知れない。
けれど、自分が大切に思うこと、
大切に思う人を守って行こうとするのは
きっと間違った想いではないはずなんだ。

今の世の中で俺達の行き先は
ずっと限られていて何所にも無いのかも知れない。
けれど、俺は俺と言う人間で、
何が自分にとって大事なのかちゃんと知ってるんだ。


『今は信じられる?』


その問に岬は優しく答えてくれた。
その小さな答えは誰にも、何所にも聞こえない。
俺の隣に居る奇跡にもう答えなんて必要無い。
それは俺の中で芽生えて
大きく育っていく幹と同じ、
俺の中で強く逞しく成長する。

もっともっと強い人間になろう。
自分には守るものがあるから。





だから岬は






必ず俺の隣に居て欲しい









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