True






ブラインドから差し込む光が
僕の目をそっと揺り起こす。
それは優しい優しい朝の呟き。


近くで聞こえる小鳥のさえずりが
行き交う街の喧騒が

ゆっくりと僕の耳に零れ落ちた。


『ぁ・・・』


白い、白い朝。
眩いオレンジが休みの朝を告げる。

(今日は練習オヤスミだっけ・・)

サラサラの布団に顔をこすりつける。
柔らかいタオルケットに包まって息をつく。

『昨日の電話・・・』


心の中の何かがはじけ飛んだ。
思い立って布団を跳ね除ける。


そう。
昨日の夜、若林君からの電話があって
今日僕の家に来るって。

突然に言うからコッチだって驚いてるのに。



ちょっとまだ寒い朝の空気の中、
居心地のいいベットから
僕の足が冷たい床に滑り落ちた。









柔らかい春の日差しに囁かれながら
僕は部屋の掃除をして
軽やかな空気の漂う春の街に
買い物に降り立つ。

若林君は何が好きかな?
何時に来るとも言って無かったけど
若林君の好きなもの揃えよう。
春の匂いのする、若林君の好きなもの。

若林君の笑顔を思い出す。



僕に向ける眼差しはいつも優しくて
この陽気の様,
いつでも包みこんでくれるみたいに
キラキラ輝いているから・・・

売り物のオレンジにキスをして
お店のおじさんに差し出す。






本当は知ってるんだ。










夕方の6時。
きっかりにチャイムが鳴る。

僕の心臓がドキンと鳴った。


あるでスローモーションみたいに
ソファから僕の体が起き上がる。
その答えを僕は知ってる。
チョコみたいに甘い時間の始まりなんだ。


ゆっくり、ゆっくり
僕の足が玄関に向かう。

もう一度、せわしそうにチャイムが鳴った。

室内のカギを外して
ゆっくりとカギを開け、ノブを回した。
そろそろとドアが外に押し出される。



誰も居ない?









僕の目の前に巨大な花束が現れる。


白い花に囲まれた
幸せそうな甘い薔薇。






とまどう僕の前に
突然若林君の姿が飛び込んでくる。


『今日はホワイトディだよ』




元気そうな姿で現れて
僕の全てを奪って行った。

『元気だったか?』



僕の足が躊躇する。

『コレ』

持っている巨大な花束を僕の方に差し出す。

『今日、ホワイトディだから』






僕の口元に笑顔が戻る。

『僕、バレンタインディに何もあげてないよ』




そう。    2月。
僕達には忙しい季節で
若林君に何も渡せなかったんだ。

それが心残りで
電話もロクに出来なくて・・・



差し出された花束を胸で受け取った。






『岬からは何も受け取っていないけど・・・』

若林君の横顔が照れ臭そうに歪む。




『オレがホワイトディにお返しするのはお前しか居ないから』




その真摯な瞳に僕の心は砕けてしまった。



『このバラの様にオレが全部守ってやる』















白い花に囲まれた一輪の赤い薔薇。
ギュッと花束を抱きしめてそっと胸が詰まる。














『・・・・・バカ』






僕の焼けそうな頬の下から
そんな言葉しか浮かんでこない。

でも






若林君は



笑って僕を抱きしめた。









































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