WHITE SPRING


学校がお休みになって
若林君が日本に帰ってきた。

『明日は天気が良いから公園で待ち合わせな!』

長かった試験勉強から開放されて
まだちょっと寒い日差しの下で
思いっきりの開放感を吸い込む。

公園までの通り道、
今日は静かな連休の初日、
世界が立てる音に耳を傾けた。



世界中が音を立てて僕に知らせるよ。



時折走り去る車の音。
長く尾を引く原付の音。
通りを歩く女性がたてる
コツコツと言う規則正しい音。
ランナーが横を過ぎた時、
浅く短い息継ぎの音。

角を曲がって細い路地に入る。

ベビーカーが立てる低いゴロゴロと言う音。
どこかで跳ねるボールの音。
誰かが植木を手入れするハサミの音。



ちょっと暑くなってマフラーを解いた。



公園のフェンスに当たって
木々の葉っぱがサラサラと鳴る。
横を過ぎる犬の荒い息遣い。
公園で遊ぶ子供達の声。





日差しが僕に囁いた。





『岬、なんだか楽しそうだな』
そう言う若林君の顔も自然に笑顔になってる。
『うん』

『何か良い事でもあったのか?』

うん。
だって・・・


これから何度、
君と春を数えるのかな?

これから何度
こうやって笑い合えるのかな?


春の風は優しくて冷たい。


限られた時間の中で
僕らは互いを見詰め合う。

でも目の前に居るのは
僕の大好きな若林君だから。

このまま春のそよかぜに
ずっと・・・
ずっと吹かれていたい気がする。






僕の手のひらに
小さなピンクの花びらが
静かに静かに舞い降りた。



『若林君、春だよ』



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